女子学院と言えば押しも押されぬ女子御三家の一角を占める進学校ですが、決して勉強一辺倒ではなく、生徒の自主性を重んじた自由な校風が人気の源泉であったりもします。
ちなみに、女子学院の入試問題は全科目の配点が同じで、出題内容もかなりオーソドックスです。ですので、模試の偏差値が足りなくても受かっている受験生が結構います。
それでは、女子学の攻略の糸口はどこにあるのか?以下、概観していきましょう。
1. 差がつくのは算数と理科?(まず、算数の特徴について)
算数は「どこかで見たような問題」が多くオーソドックスな印象です。ただ、他校と比べて特徴があるのが図形問題の多さでしょう。しかも以下のような図形問題が頻繁に出ます。
・円や扇形と長方形や正方形を重ねたもの
・複数の直角三角形を重ねた問題
・円が移動する問題
・図形の展開図
・正五角形や正六角形の問題
などです。これらは日頃から意識して類題をたくさん解いておくと自信が付くと思います。
次に、面積の深さなどの量的変化をグラフで問う問題は、ほぼ毎年出ています。
それ以外に関しては、流水算、時計算、仕事算、消去算などなど、まんべんなく出題されているので、あまり網を絞って張らない方が得策です。
そして、女子学院の問題は「それほど難しくないが、処理能力の正確性とスピード」がかなり問われます。問題の特徴とレベル的には慶應女子が近い感じです。ですので、難しい問題は塾での特別特訓や対外模試、過去問の分析などに委ね、日頃は「標準レベルかややそれを上回るもので、速く正確に根気よく処理する能力が求められる問題」と向き合って、算数の地力を付けておきましょう。市販の参考書としては以下のものを勧めておきます。
・ステップアップ演習(東京出版)
・プラスワン問題集(数研出版)
→算数に関してはこの2冊で女子学の土台固めは十分できます。強いて言えば5年の間に「4科目のまとめ算数」を全問解けるようになっておくと良いでしょう。あとは、過去問や模試、塾の教材で応用力を養いましょう。
2. 差がつくのは算数と理科?(次に、理科の特徴について)
理科も、天体、力学、生物、化学、といった具合に満遍なく出題されるのですが、女子学院の特徴は「グラフや統計のデータ」を絡めて来ることです。しかもそれが生物の繁殖であったり植物の植生といった問題にもデータの読み取りを絡めた問題が出題されることです。
ですので、数値を絡めた資料を素早く読み取り、分析し、出題に的確に素早く答えていく能力がないと自滅してしまいます。この点について苦手なお子さんは、意識して数値を絡めた資料問題を他の受験生より多く解いておくことが必要です。
なお、中堅校かそれ以下の学校にありがちな、理科的知識を一問一答の形で問う問題はありません。かといって思考力やひらめき重視と断言するほど難問でもありません。算数と同様、「判断能力&分析能力&処理能力」が重視される出題傾向と言えるでしょう。訓練でカバーできる範囲ですので、女子学志望の皆さんは努力重視で、汗を流して勉強すれば必ず合格が近づいてきます。
特定の市販の参考書で「女子学にはこれ」というものはなく、過去問に近い問題を、複数の市販の問題集、塾の教材や模試、他校の過去問からよく渉猟しておきましょう。
3. 国語は量的にも質的にもあっさりだが、「渋い」文章が多い。
まず、女子学の読解ですが、大多数の他校のように「物語文と説明文(論説文を含む)が大問で1つずつ出題される」といった感じではなく、読解の大問が2つあるうちの2つとも説明文だったりします。ただし、説明文といっても著者の主張が込められた、どちらかと言うと随筆に近いものです。また、長い文章は出ません。ちなみに物語文も過去に出ていますので(石井桃子さんの文章)、日頃からトレーニングが必要です。出題された作者で著名な方を挙げてみると、
・今北純一さん(ビジネスコンサルタントで自己啓発本多数)
・大林宣彦さん(「時をかける少女」などヒット作を多く手掛けた映画監督)
・鷲田清一さん(哲学者で阪大の元総長)
・蜂飼耳さん(詩人で物語作家)
・梯久美子さん(「散るぞ悲しき」が大ベストセラーになったノンフィクション作家)
・内山節さん(思想家)
・小川洋子さん(映画化された「博士の愛した公式」などが代表作の芥川賞作家)」
・斉藤孝さん(「声に出して読みたい日本語」などのベストセラーがある国語学者)
など、幅広いジャンル、書き手にわたっています。また、テーマに関しても、芸術を論じたもの、生きることについて思索したもの、日常で起こったことについて感じたことをささやかに綴る何気ないフラグメント的なエッセイ、環境問題に関して著者の思想的なフィルターをと通して論じたもの、などなど、毎年決まったテーマが出るわけではありません。
問いに関しても長い記述問題が出るわけでもなく、選択問題もたくさん出ます。
女子学の読解に関しては「程よい文字数」の文章を速く読んで素早く趣旨を把握し、問いに的確に答えるトレーニングが有用です。
なお、漢字と語彙についての独立した大問が無いのも女子学の特徴ですが、大問1と大問2の読解の中で、角度を変えて様々に問われますので、日頃から漢字と語彙を鍛えておくことが必要です。なお、日頃の読書の中で漢字力と語彙力を鍛えている方の方がさらに有利と言えます。なぜなら、女子学の場合、読解の文章の中で漢字と語彙を問う設問がほとんどだからです。
最後に読解でお勧めの問題集を挙げておきます。塾教材に関しては、四谷大塚の予習シリーズ、日能研のNシリーズ、サピックスのBテキストをはじめ、どれも「女子学対策としては文章が長すぎる」きらいがあります。この点、市販の問題集が、例えば過去問などを適切な分量にアレンジしていたりして便利です。
・出る順読解86(旺文社)
・読解の応用(啓明館)
・読解の完成(啓明館)
・国語の読解力をぐんと伸ばす(説明文編・数研出版)
・国語の読解力をぐんと伸ばす(物語文編・数研出版)
などを特にお勧めしておきます。
4. 社会は知識重視だが、分析・思考系の問題も必ず複数出題される。
女子学の社会は、一問一答とまでは言えませんが、短い問題文で知識を問う問題が多数問われます。ただしここでは「知らなきゃ即アウト」の知識問題だけでなく、少し考えさせるものや、日頃の生活で培われた知識を問うもの(例えば「寒天の材料は?」など)も含まれます。
資料の分析・読み解き問題に関しては、
・当時の文章(お触れや、当時の新聞に載った文章など)を読んで考えさせるもの
・地図を読み解かせるもの
・グラフや統計を分析させるもの
の3パターンが、バランスよく出ます。
ですので、知識をたくさん増やし、メンテナンスする一方で、資料分析問題にたくさん取り組む必要があります。
なお、知識の総整理および、当時の歴史資料に関する問題への対策として有用なものとして、
・四科のまとめ社会(四谷大塚)
・社会のこれだけは(地理・歴史・公民の全3冊・森上教育研究所刊)を、
資料の分析問題としては、
・記述P R O社会(数研出版・記述P R Oというタイトルですが、資料分析問題がふんだんに収録されています)
をあげておきます。
また、地名や地域情報に関しては、
・白地図まとめノート(増進堂・受験研究社)
・出る順 白地図217(旺文社)
統計全般に関しては、
・日本のすがた(毎年発行。矢野恒太記念会)
歴史年代に関しては、
・出る順 歴史年代(旺文社)
公民の知識に関しては、
・啓明館が紡ぐ現代社会(啓明館)
をお勧めしておきます。ちなみに、
・都道府県データブック(各出版社の中から自分に合ったものを。農商工データもしっかり
しているものがお勧め)
・社会用語・資料集(早稲田アカデミーが監修した増進堂・受験研究社のものがお勧め)
も必携です。
5. 最後に(女子学院の入試問題に関する全般的なまとめ)
・算数と理科で差がつく。典型問題が多いが、処理能力の正確性とスピードの点で、受験生
の間で開きが出る傾向。
・国語は日頃の読書によって語彙・漢字の知識を涵養しているお子さんが有利
・社会は知識重視だが、知識問題に見えて「少し考えさせる」問題がたくさん出る。
また、しっかり考えさせる資料分