伸び悩んでいるお子さんに対して「とりあえず、四谷大塚の予習シリーズを使いましょう」と提案するプロ家庭教師の方は多いです。
しかし、うまくいってない先生、ご家庭は多い。
「うちに登録してくださっているプロの先生に、サピで伸び悩んでるお子さんを紹介したんですが、予習シリーズをゆるゆるとやっていて全然ないんですよー、しかも、もう6年生の10月。どうしたらいいでしょうか」
(都内の準大手のプロ家庭教師会社の営業部長さん)
といった具合です。
なぜか?
中学受験ビジネスのそもそもの歴史を振り返る必要があります。
昔は、みんながみんな中学受験に挑戦していたわけではなく、近所の塾だったり街の大きな塾に通って、そこの先生のノウハウとプリント、教材に頼りながら目指していました。参考書も「力の5000題」みたいなのをゴリゴリ解いて地力を付けるお子さんもたくさんいました。
いわば中学受験は、「ある程度頭が良くて早熟なお子さんを選ぶためにふるいをかける」といった色彩がとても強いものでした。
そして登場したのが四谷大塚です。
「予習シリーズ」という、参考書と問題集がall in oneになったテキストを軸にそのテキストが出題範囲の定期テストを受け、志望校を目指すというスタイルは全国の塾を席巻し、みるみるうちに「四谷大塚準拠」を謳う
塾が全国に誕生しました。
しかし、「広範囲な予習」を強いる学習スタイル、テキストのテスト範囲の内容と実際に出題される問題がそこまで一致してないなど、応用力は弱いお子さんのかなりの数が脱落する現象も起こりました。
その間隙を突いて、圧倒的な支持を獲得したのがサピックスです。
TAPという塾を脱藩したS氏を始めとする何人かの教師がサピックスで提示したのは、四谷大塚の教材を脱構築し、「精緻な反復による学習システム」の上に「反復システム身につけた知識で応用力をギリギリまで鍛えあげる講義」を重ねた、いわばコロンブスの卵のような画期的教育法でした。
ちなみに東大に多数合格者を出している有名私立の進学校の教育システムはサピックスの教育システムとものすごく共通する面が多々あります。
サピックスに通っていれば、過大な予習に追われずとも反復学習ができ、しかも習熟度別のクラスでありながら、上位クラスが使っている教材がもらえてクラス昇降テストも受けられるため、「成績は低いし、地頭に自信はないけど、それなりの学校を受けたい」というご家庭とお子さんの圧倒的な支持を得てこの塾は今に至っています。
つまり、予習シリーズの弱点である「反復部分の弱さ(類題の提示仕方がやや雑)」、「問題の羅列がレベル的にややごちゃごちゃ」といった問題を克服して開発されたのがサピックスのシステムなのに、
「サピックスで上手くいってない?じゃあ、予習シリーズを使いましょう」
とプロ家庭教師がご家庭に提案するのは、本末転倒なのです。
なお、一部の「プロを名乗る」の家庭教師側の事情としては、「四谷大塚や日能研の問題しか解けない、解説できない」という理由から予習シリーズを提案してくることもあるようです。
その証拠に、ある大手塾では、予習シリーズを教えられることを前提に、それ以上のことを教えられる先生を重用・厚遇するという人事システムを採っているようです。
少し脇道にそれますが、社会の予習シリーズは、野菜の生産高や鉱物の産出高などのランキングが第3位までしか載ってませんが、それでは今の入試では対応できないため「日本のすがた」(毎年発売)といった、中学受験用の統計ブックで補う必要があるのです。
しかしそこらへんまで頭に入れて対応しているプロ家庭教師の方は少ないのが現状です。
というわけで、「成績が伸びない?じゃあ、予習シリーズ使いましょうか?」というプロ家庭教師に出会ったら、ご家庭は用心した方が良い、というお話でした。
